2025.10.28 15:00安息の地心からの満ち、すなわち幸せを感じた記憶が極めて少なかった。この事実にはあえて触れず、見てみぬふりをしながら生きてきたが、いよいよ対峙のときがきた。ある日、「もう必要な材料は揃った」と言わんばかりの逞しい鐘の音が内で響いた。話は幼少期に遡るが、いま思えば、対峙に至るまでの旅はもう既にここから始まっていたのだと思う。わたしは保育園の登園バスに乗っていた。ディズニーキャラクターのドナルドが描かれている、...
2024.12.07 15:00love letter俳優の中山美穂さんが亡くなったことを知った。それで、一番先に頭によぎったのが岩井俊二監督の'love letter'だった。わたしはこの映画と、この中山美穂さんが大好きだった。
2024.04.30 15:00切り取られた一カ月上京したての18歳の頃だった。私は社会に溶け込めず、日本から離れた遠いどこかへ逃げたかった。一人暮らしの家賃、光熱費、食費、すぐに手元のお金なんかは消える。それにやりくりするような出来た性格でもないため、留学しようにもまずお金がない。私は掛け持ちでアルバイトを始めることにした。春に誕生日を迎え、晴れて19歳となった私は、初めて水商売へと足を踏みいれる。池袋にある小さなガールズバーだ。見知らぬ人の隣...
2023.12.31 15:00でたらめなガラクタの車18歳目前の春に、自動車教習所に通いはじめた。私の誕生日は5月なので、 誕生月前の4月から通えた私は、まだ高校3年生になったばかりだった。いっときの期間だけ、午後の教習のために5限6限の授業やホームルームをすっぽかした。田舎特有の、1時間に1本しか出ない貴重な電車を見逃すわけにはいかないからだ。そこまでして春の教習にこだわっていたのは、変化のない生活にちょっとした刺激が欲しかったのと、卒業や春休み...
2022.09.02 15:00西瓜夏、初めて西瓜のお手伝いに行ってきた。朝の2時間だけ。日頃の運動不足解消にもなっていいし、それ以上に面白そうだから行くことにした。私のお手伝いのイメージは、畑で麦わら帽子をかぶり、こまめに麦茶を飲みながら小ぶりの西瓜を収穫する。だが実際は倉庫みたいなところが作業場で、ベルトコンベアのようなものがあったりなんかして、早々にイメージしてた世界観が崩れた。勝手にドラマを膨らませ、期待しすぎた私にしか責任...
2019.06.30 15:00好きと生きる私は自他ともに認める気分屋で、一日経つと昨日のことすら綺麗にリセットされる、なかなか都合のいい頭を持っている。だから毎朝、目を覚まして愛猫の顔を見るたびに「待って、今日のお顔も可愛すぎない!?」と、まるで生まれて初めて珍しい生き物に出会ったかのように新鮮に悶絶しているのだ。寝ている顔をフニフニとこね回し、ご飯を食べる小さな歯を後ろからじーっと眺め、お風呂場まで文句を言いに来た猫に「わざわざ私の居場...