2024.08.24 15:00でたらめなガラクタの車一八歳目前の春に、自動車教習所に通いはじめた。わたしの誕生日は五月なので、誕生日前の四月から通えたわたしはまだ高校三年生になったばかりだった。午後の教習のため、五限六限、ホームルームをすっぽかした。田舎特有の一時間に一本しかでない貴重な電車を見逃すわけにはいかない。変化のない生活にちょっとした刺激が欲しかったのと、卒業や春休みなどの混雑時期に同年代の人たちと教習所でまで顔を合わせたくないこともあっ...
2022.09.29 15:00切り取られた一カ月上京したての十八歳の頃だった。わたしは社会にとけ込めず、日本から離れた遠いどこかへ逃げたかった。都内のサロンに勤めたのだけれど、給料はそう高くもない。一人暮らしの家賃、光熱費、食費、すぐに手元のお金は消える。それに、やりくりしたり貯金なんてできる出来た性格でもないため、留学しようにもまずお金がない。わたしは掛け持ちでアルバイトを始めることにした。春に誕生日を迎え、晴れて十九歳となったわたしは、はじ...
2022.09.28 15:00五感で六感を抱きしめる内側に何通りもの自分がいるくせに、飽き性のくせに、結局のところ本当に好きなものはほとんど変わらない。のが、わたしだな、と思う。基本的には、化粧品も、服も、香水も、ずっとずっと同じものを使っている。しっくりこなくて次々と変えてしまうものもあるけれど、それはそのジャンルにおいて、これだ、と運命を感じるような本物に出会っていないだけで、出会う前提で彷徨い、探しているのだと思う。同じものを使う理由も情で捨...
2022.09.02 15:00西瓜夏、はじめてスイカのお手伝いに行ってきた。朝の二時間だけ。日頃の運動不足解消にもなっていいし、それ以上に面白そうだから行くことにした。わたしのお手伝いのイメージは、畑で麦わら帽子をかぶり、こまめに麦茶を飲みながら小ぶりのスイカを収穫する。だが実際は倉庫みたいなところが作業場で、ベルトコンベアのようなものがあったりして、早々にイメージしてた世界観が崩れた。勝手にドラマを膨らませ、期待しすぎたわたしに...
2022.07.31 15:00不真面目未満、真面目未満頻繁に高校を休んでいた。もしくは二限目から行ったりお昼を食べてから行ったり、五限が始まる前に帰ったり。 義務教育でもないのだから行きたくないのなら行かなければよかったではないか。そう思う。それでも高校進学を選んだのは、きっと、両親なりの愛を受けとるための一環として必要だったのだろう。わたしの父は町工場を経営している。彼の学歴は中学までだ。当時の時代や風潮から、学歴の有無による向かい風を感...
2022.06.10 15:00贅沢な魂わたしにできることってなんだろう。絵を描くこと、言葉を綴ること、写真を撮ること、の表現すること、そして、ただ存在すること、で、わたしが与えられるものってなんだろう。そんなふうに考えた日だった。考える、問う、この過程が好きだ。なぜなら、考えたら、問うたら、必ずそれらに応える答えはやってくるから。その瞬間、今すぐにやってくることもあれば、時間が経って忘れた頃にやってくることもある。自分のなかにある世界...