手を加えない恐さ


手を加えない恐さがある。

加えたり、付け足したり、やり直したり、しない。

わたしが今、水彩を表現の軸にしているのは、そんな、そのままで在る恐さと向き合うのに適しているからでもある。


偶然というものは存在しない。

この前提で生きているわたしにとって、自由に広がり、混ざり、その位置で留まる色たちの存在一つ一つに意識がある。

偶然のようにさえ見える奇跡を疑わず、あるがままに価値を見出す訓練をしている自分がいる。

近視眼的には理解できなくても、価値を感じられなくても、わけが分からなくても、純粋な目で見たとき、なににも囚われていない純粋無垢な大いなる価値と同調し、共鳴する瞬間が必ずある。


手を加えない恐さを越えたとき、自由で純粋無垢な、唯一無二の不思議な美しさに出会える。

わたしはその瞬間にできるだけ多く出会いたい。